年金問題への安倍幹事長と田原総一朗氏の発言
2004年5月30日
宇佐美 保
今朝のテレビ朝日「サンデープロジェクト」に於いて、安倍晋三自民党幹事長は、「年金に関して」次のように発言していました。
年金という性格上、基本的には、自分が自分の老後に備えて蓄えて行く。 一方、義務化して「皆年金制度」として支えようという仕組みになっている。 その狭間の中で、“自分のことは、自分でやれば”と云うところがあった。 |
ところが、年金問題の根本に無知で、
自らも年金未払い期間があった司会の田原総一朗氏は、“義務なら、通知してくれよ!”と喚きました。 |
残念なことです。
安倍氏の発言を田原氏の為に解説するなら、次のようになります。
“年金という性格上、基本的には、自分が自分の老後に備えて蓄えて行く”と云うことをより分かり易く云えば次のようになるのです。
「年金」と云うのは、自分が国に収め積み立てたお金が(国によって運用増やされて)、老後に国から「年金」と云う名目で返却されてくる性格のものであるから、田原氏にしろ、筑紫哲也氏にしろ、又、小沢一郎氏にも未加入期間があったところで何の問題もない。
(そして、この様な発言をされる安倍氏ご自身も年金未払いなのかとさえ勘ぐってしまうのです。)
この意味から云うと「年金」こそが「自己責任」的性格なのである。
ですから、未加入者に対して、(他人が積み立てたお金を使って)加入を請求するのは、今まで積み立てている人の権利(積立金)を侵害することにすらなる。
又、加入者が未払い期間分を、後日、収めると云っても、本来正規の期日に収められていれば、その支払金(積立金)は、その時までに国の運用によって、払い込み時の何倍かの価値に増大しているので、未納金の後払いは、正規納入者に対して損害を与えることとなる。
(運用益の計算などを厳密に行えば、全く不可能と云うことはないが、「年金は自己責任」の原則から云えば、役所の仕事を増やす、即ち、正規納入者の権利侵害となる。)
これが、「本来の年金」の仕組みである。
しかしながら、本来は「年金は積立金方式」であるべきを、年金役人達は「花沢問題発言」によって扇動され、「年金積立金」を運用の努力を怠った上、食い潰してきたのです。そして、「積み立て方式」が破綻してきた今、「花沢発言」(拙文《年金ジャーナリスト岩瀬達哉氏の大罪》参照、文末にも抜粋します)通りに、国民を上手く騙して、本来の“年金は自己責任”から “年金は、国民みんなが支え合う義務”(即ち、賦課式)へと、国民を洗脳してしまったのです。
(田原氏、年金ジャーナリストの岩瀬氏をはじめ、みんな洗脳してしまいましたよ。
田原氏は、番組中、次のように発言している始末です。 “年金開始当初の予測では、「人口は増え続ける」&「経済は成長し続ける」であった。 (なのに、この2つの目論見が破綻したところに問題がある。)”) |
それに、年金ジャーナリストの岩瀬達哉氏は、拙文《年金ジャーナリスト岩瀬達哉氏の大罪》にも掲げましたが、その一部を掲げます。
すっかり「花澤発言」の「賦課式」の虜になってしまっている岩瀬氏は勝手に(花澤氏の思惑通りに)、次の飛んでもない「年金黒字方程式」を打ち立ててしまったのです。
「われわれが払う年金掛け金」マイナス「給付すべき年金額」=「年金積立金」 |
ところが、(役所の習性で)社会保険庁は、(頭はとっくに切り替わっていたとしても、行動が遅い為)“年金は国民の義務”との観念に基づく行動が未だとれていないので、「年金の未加入、未払いの催促」の仕事を怠っているし、「未納金の後払い制度」(未払い期間の運用利益計算)の確立を怠っているだけなのです。
と申しましても、この「未払い期間の運用利益」を算出しようとしても、残念ながら今までは運用損、不良債権化の問題があって、運用益等は出せないのです。
と云うことですから、同じ年金未加入未払い問題でも、騙され続けてきた一般国民と、騙した方の役人、国会議員(特に、自民党議員)との責任の比重は全く異なるのです。
況わんや、この国の首相の責任は重大なのです。
従いまして、田原氏が「年金の本質」を安倍氏同様に理解されていたら、“今更、国会議員の未払い問題など問題にするなど馬鹿げたことだ”等との発言をすることなく、彼等が「本来積立金方式」であった年金制度を、「賦課方式」に貶めた罪、即ち、「積立金運用」によって、現在の積立金総額百数十兆円を二百或いは三百兆円に増やすべき義務を怠って、(岩瀬氏の指摘する9兆円の運用ミスや、グリーンピア問題どころではない)多大の損害を私達に与えた責任問題を、安倍氏にその場でぶっつける事が出来たのです。
(補足:花澤問題発言)
何度も引用させて頂いておりますが、ご参考の為に、岩瀬氏最大のスクープ「花澤発言」を、今回も引用させて頂きます。
……どうやら年金制度の発足当時から、すでに年金官僚たちは利権のことを考えていた。 現在の厚生年金保険法の前身である労働者年金保険法が制定されたのは、戦争中の昭和十六年のことです。この法律の起案者で、戦前の厚生年金保険課長だった花澤武夫氏が、一九八六年に厚生省の外郭団体が主催した「厚生年金保険の歴史を回顧する座談会」で当時を振り返っているのですが、身内相手ということもあって、驚くほど率直にホンネを語っている。 「年金の掛け金を直接持ってきて運営すれば、年金を払うのは先のことだから、今のうち、どんどん使ってしまっても構わない。使ってしまったら先行困るのではないかという声もあったけれども、そんなことは問題ではない。……将来みんなに支払う時に金が払えなくなったら賦課式にしてしまえばいいのだから、それまでの間にせっせと使ってしまえ」と自ら手口を明かしているのですから、開いた口がふさがりません。 |
この「花澤発言」の“将来みんなに支払う時に金が払えなくなったら賦課式にしてしまえばいいのだから”の意味を何故岩瀬氏は重要視しないのでしょうか!?
多分、「花澤発言」の真意を御理解出来ていないのだと存じます。
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